ボクが選んだボクの人生~26 何かが変わっていく~ [小説「ボクが選んだボクの人生」]
少し変だな、と思い始めたのは4歳の誕生日より少し前だった。
それまでは、上手い具合に共存出来ていた「湘子」としての意識と
「ふわふわ」の上から途切れることなく続いているボクの意識に、
微妙な変化が現れ始めたのだ。
元気な女の子としての湘子を少し客観的に見ている、ボク。
小さなレストランを経営しながら、子育てもプラス思考で楽しんでいる
愛すべき父さんと母さんを幸せな気持ちで見ている、ボク。
その「ボク」としての意識が、少しずつ薄らいでいるような気がするのだ。
例えばお絵描きの時間に、無意識に花と人形の絵を描いていたり。
生まれる前のことをうっすらとしか思い出せなくなっていたり。
普通の女の子として暮らして行くには何ら支障はなく
父さん、母さんとの楽しい日々はこの上なく幸せなのだけれど、
湘子の中の「ボク」が遠からず消えてしまいそうでたまらなく不安だった。
もしかして、これは運命のようなものなのだろうか。
生まれる前からの記憶が永遠に残っていたとしたら、人はどう生きるだろう。
様々な混乱を避けるために、人はみな時間の経過と共に
生まれる前の記憶が薄らいでいくようにプログラムされているのではないか。
それから1ヶ月。日に日に薄らいでいた「ボク」の意識は遠のき、
湘子の潜在意識の「箱」の中で深い眠りについた。
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