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天才モンちゃん今日も行く(第二十七話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]

 「明日」と書いてあるのだから、急がなくてもいいように思えるが、
あの掲示板に書いてあった「12日」というのが果たして実際に「明日」なのか。
そこがモンちゃんの一番気にかかるところだった。
ミヨさんと暮らしていた頃には日めくりも眺めることが出来たし、
毎朝ミヨさんのために新聞を取ってきてあげていたので日付には詳しかった。
病院でケア棟に行くようになってからも、入り口のカレンダーを何となくみていたので、
漠然とではあるが日付と曜日は頭に入っていた。
しかし、脱走計画について考え始めてからは気もそぞろで、
病棟の玄関でカレンダーを眺めるなんてこともなくなっていた。
「もし、今日がその12日だったら・・・・。」と思うと、モンちゃんは気が気じゃなかった。
「町内を一回りしてくる。」と言って立ち去ったテツは、今どこにいるのだろう。
ともかくもテツが走っていった方向へとモンちゃんは走り出した。

 1キロほど走ったところだろうか。小さな公園でゴミ箱をあさっている白い犬が居た。
「テ・・・・テツさんを知りませんか。」おずおずとモンちゃんが尋ねると
「テツなら、さっきここに来て、今夜の集会の話をしてったぜ。」
テツたちは集会なんかするのか。飼い犬には分からない、彼らだけの世界があるんだなぁ。
いや、感心している場合ではない。野犬狩りの話をしておかなくちゃ。
「お寺の掲示板に書いてあったんですが、野犬狩りがあるそうです。
とにかく見慣れない変なえさを食べないようご注意下さい。」
「はぁ?書いてあったって、どういうことだ。お前は字が読めるのか。」
「はい、そうなんです。事情はいずれお目にかかったらご説明致します。それでは!」
早口でそういうと、モンちゃんは再び走り出した。

 何匹かの野犬と出会い、そのたびに少し躊躇しつつも掲示板の話を伝えながら
テツを探し回っていると、突然見慣れた風景に出くわした。
「ここは・・・。ミヨさんの買い物に来てあげていた、あの商店街だ!」
初めのうちは首に袋をぶら下げて、後には買い物車でお使いに来ては、
お店の人たちにいろいろと可愛がって貰っていたあの商店街。
モンちゃんの脳裏にあの頃の懐かしい思い出が鮮やかによみがえった。

ー続くー


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コメント 2

読んでいる私にも商店街は懐かしいです。(^_^)
「野犬狩り」の結末が気になります。どうなるのだろう。
そういえば、昨晩のTV「いぬのえいが」みました?
by (2005-11-16 13:04) 

はなぽん

秋見さん、こんにちは。
昨日は早めの忘年会だったんです。
で、「いぬのえいが」は録画していてついさっき見終わりました。
山田君とポチのお話、美香ちゃんとマリモのお話、
どうにも泣けて困りました。
初めの方のCM作成現場もよかったし、
渡辺エリ子さんと佐野史郎さんのミュージカルも。
とりあえず今、私の目は泣きはらしています。
by はなぽん (2005-11-16 13:14) 

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