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天才モンちゃん今日も行く(第十五話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]

 病院の中庭は、モンちゃんが想像していたよりもはるかに広かった。
何本かある桜の木の下にきれいな若草色のベンチがあり、
パジャマの上に厚手のカーディガンを羽織った初老の女性が本を読んでいる。
先生はモンちゃんのリードを空いているベンチの支柱につないで病棟の方へ行き
しばらくすると約束通り温かい牛乳を持ってきてくれた。
「今からミヨさんの病室に行って様子を見てくるね。そのあと他の患者さんの
回診もあるから、ここでお利口にして待ってるんだよ。」
きちんと説明してくれる先生の、自分を一人前に扱ってくれる優しさが
不安でたまらないモンちゃんの気持ちをずいぶんと和らげてくれていた。

 先生の後ろ姿を見送って、牛乳を飲んでいたモンちゃんのそばに、
別のベンチに座っていた女性が近づいてきて、静かにモンちゃんの頭をなで始めた。
「いい子ねぇ。先生、きっとすぐに帰ってきてくれるからね。」
女性はモンちゃんのことを川橋先生の飼っている犬だと思っているようだ。
「昔うちで飼っていた子にちょっと似てるわ。懐かしい・・・・。」と言いながら
モンちゃんの顔をじっと見つめて涙ぐんでいる。
モンちゃんはその人の膝に体をくっつけて「くーん。」と小さく言った。
「ありがとう。話してたら、何だか元気が出たわ。ほんとにありがとう。」というと、
その人は笑顔で手を振りながら病室の方へ帰っていった。

 同じように何人かの患者さんがモンちゃんのそばに来て頭をなでては、
いろいろな話をしたあと笑顔で手を振って去っていく。
何度となくそれが繰り返されるうちに、回診を終えた川橋先生が戻ってきてくれた。
「寂しかった?ごめんね、待たせちゃって。寒かったでしょう。
おばあちゃんはね、手を握ると少しだけ握り返してくれるようになってきたよ。」
そう言うと、先生はモンちゃんのリードをベンチからはずして病院の裏へ連れて行った。
「見て、モンちゃん。僕が段ボールで作ったんだよ。なかなかいいでしょう。
何たって図工は大の得意だったからね。」と嬉しそうに笑う先生。
冬の夜でも寒くないようにと、先生が作ってくれた「モンちゃんの別荘」は、
ミヨさんのお布団に負けないくらい暖かだった。

ー続くー


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降龍十八章

工作はいつも企画倒れで、完成したためしのない降龍です。
見かけは器用そうで実は不器用なんですね。いいかげんな性格も、工作には不向きなようです。
また、娘さんと孫に登場してもらいたいです。
by 降龍十八章 (2005-11-04 13:52) 

はなぽん

降龍さん、私は図工「2」でした。体育も(>_<)
それに、実は負けないくらいいい加減ですよ。
毎日モンちゃんをアップ出来てるのは奇跡に近いです。
冴子さんと功太君、近日再登場です。待っていてくださいね。
by はなぽん (2005-11-04 17:19) 

先生もいい人ですね。
冴子さんと功太君、再登場ですか。楽しみにしています。
by (2005-11-04 17:51) 

はなぽん

秋見さん。川橋先生は私も大好きな人です。
仕事と割り切っての医療ではなく、
人を人として愛することの出来る医療を追求している、
やさしくて暖かい人。こんなお医者さんがたくさん居るといいですね。
冴子さんと功太君も大好き。ダンナさんの影が薄いのが気になりますが
これはご主人の実家が造り酒屋さんだから
いっしょに遊びに来れない、のです。
ちょっと苦しい?最近考えた「言い訳」です(^^)
by はなぽん (2005-11-04 18:24) 

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