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天才モンちゃん今日も行く(第八話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]

 裏木戸の下をくぐり抜けてミヨさんの様子を見に行きたいのだけれど、
あいにくモンちゃんには買い物車がとりつけてあってそれもかなわない。
ここは誰かに助けてもらうしかないと咄嗟に考えたモンちゃんは、
つい今し方、茄子を買った時にミカンを二つおまけにくれた
八百屋の水田さんの店まで戻ってみた。
しかし日が暮れて品物も尽きたのか、もうすでに店は閉まっていて
「ご用の方は裏へお回り下さい。」と書かれた札が出ている。
モンちゃんはその札をじっと見つめてみたが、悔しいことに「裏へ」が読めない。
仕方なくその場でくるくると二,三度回ってみたものの、
「こんなことしたって何になるものか」と思って茫然と立ちつくしていた。
ところがしばらくすると、出しっぱなしの木の箱を仕舞うために
おじさんが店の表にひょっこり出てきてくれたのだ。

 「おぅ、モンちゃん。何か買い忘れたのかい?出してあげるよ。何でも言いな。」
いつものように少ししゃがれた声で話しかけてくれるおじさんに向かって
「わん!わん、わん!」と訴えてみたけれどさすがに伝わるはずもない。
口で言えないからには実力行使しかないと決心したモンちゃんは、
おじさんの服の裾をぐいっと噛んで強く引っ張ってみた。
「おいおい、どうしたんだいモンちゃん。おじさんはミカンじゃないから持って帰れないぞ。」
分かってるよおじさん。だけどどうにも他に手だてがないんだ。
モンちゃんは渾身の力を振り絞って、ミヨさんの家の方へとおじさんをぐいぐい引っ張る。
彼のただならぬ気迫に、水田のおじさんも何か気づいたらしく
「よし、何か困ってるんだな。とにかく行こう。」と走り出してくれた。

ー続くー


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コメント 4

樹

おはようございます。樹です。
今日は・・ミヨさんがどうなっちゃってるのかドキドキしながら読ませて頂きました。
そうか!モンちゃんはまだ「裏」を学習していなかったんですねww
でも・・・八百屋のおじさんが洞察力のある人でよかった!
さぁ!二人(?)とも急いで!・・・ですね。
by (2005-10-28 09:00) 

はなぽん

樹さん、いつもありがとう!
そうなんです。裏、っていう字を覚えてなくて。
モンちゃん、日々学習中です。
そして私も、日々学習中。
文章を書くって、ホントに難しいです。
by はなぽん (2005-10-28 16:04) 

tmk

はじめまして。
ほのぼのとした筆致がよいですね♪
ミヨさんがどうなったのか心配です。
また続きを楽しみにしています。
ところで、小説とかエッセイのカテゴリがないというのは困りますよね。
私も応募作品以外をどこに分類していよいのか疑問に思っていました。
管理側からはなにか反応はありましたか?
ではまた。
by tmk (2005-10-28 16:19) 

はなぽん

tmkさん、初めまして。
正真正銘の初心者で、何も分からずに書かせてもらっています。
カテゴリーの話ですが、管理者のブログに書き込みしたものの
未だ反応はありません・・・・。
長い目で見ていくしかないのでしょうね。
きっとお忙しいのでしょう。
tmkさんの作品も拝見しました。
きっとお若いのに、私よりはるかに大人っぽいステキな文章。
すごいですね。またゆっくり拝見しますね。
by はなぽん (2005-10-28 16:41) 

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