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ボクが選んだボクの人生~11 ボクがいるよ~ [小説「ボクが選んだボクの人生」]

 彼女のオナカの中にいる赤ちゃんに意識を重ね合わせるのは、
ボクが予想していたよりはるかに容易だった。
おそらく、彼女はどちらかというと敏感なタイプで、妊娠に気づいたのも人より早かったのだろう。
温かでほの暗いこの場所にすぐになじむことは出来なかったが、
不思議とさっきまでの不安な気持ちは消えていた。
ボクは、ここにいる。自分で選んだこの場所に。
根拠のない安堵感のせいで、ボクは少し眠くなった。
とにかく、ちょっと眠ろう。考えても仕方のないことばかりなのだから。

 どれくらい眠っただろう。話し声で目が覚めた。
「分かってるよ。急にそんなこと言われたって困る、っていうの。
だから、今すぐ結論を出して、とは言ってないの。
ただ、聞いてほしかったんだ。一人では抱えきれなかったんだ。
なのに、急に帰っちゃうんだもの。あんまりだよ。」
電話で話をしているようだ。むろん、彼女が彼に、である。
なるほど、オナカの中にいると、こういう感じに聞こえるのか。
妙なことに感心しながら、ボクはさらに耳を傾けた。
「うん、明日、だね。ちゃんと話そうね。待ってるからね。」
自分の気持ちはきちんと伝えるけれど、やたらに相手を責める様子はない彼女の物言いは
何だかとっても潔くてステキだった。
「ずっと、この人の味方でいよう。」とボクは心に決めた。


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