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天才モンちゃん今日も行く(第二十二話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]

 ミヨさんが亡くなって2ヶ月近くが過ぎようとしていたある日、
冴子さんが功太君を連れて、川橋先生に会いに病院にやってきた。
モンちゃんが功太君に抱きつかれながら耳を澄ますと、冴子さんは
「おかげさまで四十九日も無事に済みまして、納骨致しました。」と話している。
「しじゅうく、は数字だと思うけれど、のうこつって何だろう?」とモンちゃんは思った。
いろんな本を読んでもらってかなりたくさんの言葉を覚えてきたけれど
「のうこつ」という言葉は今まで一度も聞いたことがない。
すると先生が「お墓はどちらになるんですか?」と冴子さんに尋ねている。
のうこつは分からないけど「お墓」は知っている。昔話に何度か出てきたぞ。
それにミヨさんと散歩をしている時にお墓の前を通ったこともある。
どうやら先生と冴子さんはミヨさんのお墓の話をしているようだ。
耳をそばだてているモンちゃんにはおかまいなく
功太君は嬉しそうにモンちゃんのほっぺたを突っつき、
小さなゴムボールを投げて「取ってきて!」とせがむ。
仕方ないなぁ、と追いかけながらも、久しぶりに功太君と遊べる楽しさに
モンちゃんの心もゴムボールのように軽く弾んでいた。
いろんな事情で日帰りしなくてはならない二人だったが、
功太君はどうにも寂しそうに「帰りたくないもん!」と駄々をこね、
「仕方ないのよ。」と功太君をなだめている冴子さんも寂しそうであった。

さて、翌日のこと。ちょうどお休みだった川橋先生は
「モンちゃん、ミヨさんのお墓に参ってくるからね。」と言い、バイクで出かけていった。
当然自分も連れて行ってもらえるものと信じて疑わなかったモンちゃんは、
あまりに突然の出来事に自分の耳を疑った。
先生は本当に優しくて、僕の気持ちをじゅうぶん分かってくれる人だと信じていたのに、
ミヨさんのお墓にお参りしたいという切なる願いを察してはくれなかった。
もちろん他の犬よりはずいぶんと賢いことを先生も知っているはずだが、
まさか僕の頭の中でこれほどいろんなことが繰り広げられていようとは
さすがの先生にも想像出来なかったのであろう。
だからといって、犬の僕を木につないで、自分だけミヨさんのお墓参りにいくなんて。
「こうなったら、自分で探しに行くしかない。」とモンちゃんは心に決め、
それからしばらくは「先生の隙を見て逃げ出す計画」ばかりを考えていた。

ー続くー


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コメント 2

おー、そうきましたか。
「モンちゃんの冒険」が始まるのだろうか。
続きが気になります。
by (2005-11-11 10:51) 

はなぽん

☆秋見さん、そうきました(^^)
モンちゃんがミヨさんのお墓を探す、というのは
最初から考えていたことの一つで、
むしろそのためにミヨさんが死んでしまうという
悲しい設定を変えられなかったんです。
ただ、最初はお墓を探すシーンは悲しいトーンで考えていましたが
書き進めるうちに「明るいトーンで行けそうだ」と思えてきたので
しばらく今日のような「ノリ」が続く予定です。
by はなぽん (2005-11-11 12:30) 

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