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天才モンちゃん今日も行く(第二十四話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]

  「おいおい、モンちゃん。あまり遠くに行っちゃ駄目だぞ。戻っておいで。」と
先生が大声で叫んでいる。
心配をかけてしまって申し訳ないなぁ、と思いながらもモンちゃんはひた走りに走った。
もう大丈夫かな、と思って後ろを振り向くと、先生が予想外の速さで追いかけてくる。
そうだった。先生はジョギングで鍛えているから持久力もあるのだった。
これではまずい、このままでは追いつかれると咄嗟に思ったモンちゃんは、
ゆるいカーブを過ぎるとすぐに二軒の家の間にある細い路地に逃げ込んだ。
草むらの陰に隠れて見ていると、先生はいったん足を止めて辺りを見回し、
モンちゃんが隠れている路地の方もチラリとは見たものの
気づくことなくもう一度走り始め、次第に遠く離れていった。
「ごめんね、先生。ちゃんとお墓を探してお参りしたら先生のところに戻るからね。」
モンちゃんは心で詫びながら、先生が遠ざかるのを見計らって路地を抜け、
まだ人通りの少ない早朝の町へと歩き出した。

ミヨさんのお墓のある寺の場所も名前も分からないからには、
まずは先生がバイクで出かけて帰ってこれる範囲を根気強く調べていくしか手だてはない。
この辺りはごくありふれた住宅街で、お寺の数はどちらかといえば少ない方だ。
モンちゃんはやっとのことでお寺を見つけると一目散に中に入って行って
丹念にお墓の名前を調べて回ったが、似ている字すら見あたらない。
何カ所か見て回るうちにとっぷりと日が暮れたので、
たまたま通りかかった小さな公園で一夜を過ごすことにした。
朝の散歩の時に脱走したきり何も食べていないのでかなりの空腹であったが
五月の澄んだ空気はモンちゃんの疲れた体をやさしく包み、眠りに誘ってくれるのであった。

翌朝。何かの気配に気づいたモンちゃんが恐る恐る顔を上げると、
自分より二回りほども大きな黒い犬が、低い声で唸っていた。

ー続くー


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コメント 5

とうとう「モンちゃんの冒険」が始まりましたね。
モンちゃんを応援しながら読んでいます。
と思ったらいきなりのピンチ。
どうするモンちゃん。モンちゃんの犬柄は、犬にも通用するのか。
続きが待ち遠しいです。
by (2005-11-13 10:07) 

ayazou

 あわわ、、、。モンちゃん大丈夫なのかな?
 ってか、うちの犬はゴールデンレトリーバーだから、その黒い犬と同じですね、、、。昨日、スポーツクラブに行く時にバスから柴犬をみかけて、モンちゃんを思い出しました。
by ayazou (2005-11-13 10:23) 

はなぽん

秋見さん☆アヤ蔵さんへ

☆秋見さん、おはようございます。
モンちゃん、冒険の巻です。なのにいきなりピンチ・・・?
今回は少々あざとい終わり方をしてしまいました。
日テレの2時間ドラマのCM前みたいな。
「そちもワルよのぉ」って言われそう。

☆アヤ蔵さん、熱下がりましたか?心配です。
ゴールデンレトリバー、飼っておられるんですか!いいなぁ♪
近くに住んでいたら触らせてもらいに行きたいです。
モンちゃん、きっと大丈夫。ミヨさんが守ってくれてるし。
風邪、早く治してね!
by はなぽん (2005-11-13 10:39) 

Suzu-papa

秋桜さん、

お久しぶりです。
うちのゴールデン「すず」はやんちゃ娘で、
ドッグランに連れて行くとはじめは広場一杯に走りまわって、
戻ってこないのではないかと思ってしまいます。
ですが、僕が出口の方に向かおうとするとすぐに気づいて、
「どこにも行かないで」という顔をして甘えてきます。
きっとモンちゃんのような冒険はできないと思います。
がんばれ、モンちゃん。
by Suzu-papa (2005-11-13 21:20) 

はなぽん

Suzu-papaさん、こんばんは。
すずちゃんの「どこにも行かないで」という顔、可愛いでしょうねぇ。
モンちゃんも本当はあまり冒険好きではないと思うのですが
ミヨさんのお墓を探すため、ここは頑張り時です。
応援ありがとうございます(^^)
by はなぽん (2005-11-13 23:11) 

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