天才モンちゃん今日も行く(第二十六話) [小説「天才モンちゃん今日も行く」]
ミヨさんと暮らしている頃は一人で車を引いて買い物にも出かけていたし、
一回きりだが電話をかけて先生を呼んだことだってある。
病院ではたくさんの患者さんたちを元気づけ、探し物だってお手のものだった。
そんな自分を、けっこう能力値の高い方だと思っていたモンちゃんだったが、
どこからともなく食べ物を調達し、他の野良犬とも上手につき合っているテツを見ていると
それは大きな勘違いであることが次第に分かってきた。
「生きるってこういうことだったんだ。」と実感しながらテツがくれたカツサンドをほおばっていると、
「今日はどの辺りを探すんだい?飼い主の人のお墓っての、今日も探すんだろ?」とテツが尋ねる。
ここより西に当たる一帯を探すつもりだとモンちゃんが伝えると
「そんなら、俺も手伝ってやろうか。」と言う。
「でも、テツさん・・・・いや、テツは字が読めないでしょう。」
「はぁ?おめぇは、アレか。字が読めるのか?そりゃすげぇや。」
「難しい字は読めないけど、小学生が読める程度の字は何とか大丈夫なんだ。」
「そうか。俺と違って頭いいんだなぁ。で、寺の名前は何ていうんだ?」
「それが・・・お寺の名前が分からないんだよ、テツ・・・さん。」
「そうか。じゃあ、手当たり次第に寺を見て回るしかないんだな。分かった。」
そう言うが早いか、テツが山の見える方角へ向けて走り出したものだから
モンちゃんは足がもつれるほど慌ててテツの後を急いだ。
病院暮らしのモンちゃんとは桁違いの運動量をこなしているテツは、とにかく足が速かった。
息も絶え絶えにテツに近づくと「大丈夫か、おめぇ。」と首筋をなめてくれる。
後になって心配したりするくらいなら、最初から走らないでくれればいいのに。
そう思いながらも「あ、ありがとう、テツ・・さん。」と半端な敬語で答え、
「俺は町内を一回りしてくるからな。」と言って走り去るテツを見送ると
モンちゃんはお寺の石段を息を切らしながら登って行った。
石段を登った先はちょっとした広場になっていて、そこには掲示板があった。
息を整えながら眺めてみると、そこにはこう書いてあった。
明日(12日)野犬狩りを行います。毒物を混ぜたえさをまきますので、
犬を飼っている方はご注意下さい。
これは一大事だ。急いでテツさんに知らせなきゃ。
ー続くー
お互いの長所を活かして助け合う。
そんな雰囲気を予感させられる、いいコンビですね。
まだ、しっくり噛みあっていないところが
なんだかリアルでいい。
がんばれ、と声をかけたくなります。
by (2005-11-15 11:35)
秋見さん、こんにちは。
犬同士がどんな会話をしているのか、とても興味があります。
もし本当にこんな感じだったら楽しいな、と思いつつ
想像をめぐらせて書いているので、楽しくてたまりません。
思いっきり想像の世界なのに、何だかリアル。
そういう感じを目指していけたらいいなぁ。
by はなぽん (2005-11-15 12:04)
すごい展開になってきましたね。しかも、毒入りまんじゅう?とは!
どこかの政治家みたいにならないように注意しましょう。
昔はノラ犬がりってよくあったんですが、今はあまりないような気がします。もっとも実際に見たことはないですけどね。
by 降龍十八章 (2005-11-15 13:01)
降龍さん、こんにちは。
今はあまり見ないですよね。野犬狩り。
やっている地域もあるのでしょうか。
この話の中では、危機的状況をどうやって切り抜けるかという
一つのエピソードとして挙げさせていただいています。
果たしてモンちゃんたちはどうやって切り抜けていくのでしょうか。
by はなぽん (2005-11-15 13:40)
うーん。なんかいいですね。
テツとモンちゃん。
野犬って捕まると保健所に連れて行かれて殺されてしまうって思うとそれだけで、悲しいです。飼う人も責任もってほしいですよね。
by あや蔵 (2005-11-15 19:06)
短期間でテツがここまで魅力的なキャラに仕上がる手腕に脱帽です。
モンちゃんの走力に期待します。
by 時売り −ある時間商人の話− (2005-11-15 23:12)
アヤ蔵さん☆トキタさんへ
忘年会で遅くなったのでお返事も遅れてしまいました。ひっく♪
(ほんとはお酒飲めないのでせめてブログで酔っぱらったフリ)
アヤ蔵さん、こんばんは。
今日ね、すごーい偶然があったの。歩いていたら、たまたま飼い主さんを
お出迎えしていた犬がいて、私の中のテツに似ていたので
「名前、何ていうんですか?」って飼い主さんに聞いたら
「テツっていうんですよー。」って!!
すっごく嬉しかったです。テツって、やっぱあんな顔なんだ、って。
☆トキタさん、こんばんは。誉めすぎですよー。木に登りますよー。
私の中で、テツが一人で歩き出してくれた、そんな感じなんです。
おかげで書くのが楽しくてたまりません。有り難いです。
by はなぽん (2005-11-15 23:59)